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必要なのはスマホだけ!3Dスキャンアプリ「WIDAR」で自分の粘土作品をスキャン&コツ・テクニックを大公開!

2022年9月25日

デジチン

この記事ではスマホ(iPhone)だけで、3Dスキャンができてしまうアプリ、WIDARとその使い心地についてまとめます!

この記事がお役に立てそうな方

  • 粘土彫刻など、リアル世界のデータを手軽にデジタル化したい方
  • 自宅での原型作成や複製を作るのが難しい方
  • 安価なスキャン方法を探されている方

2022/12/18 追記

WIDARの中で、3Dデータの書き出しが有料になっておりました。(今まで無料で使えていたのが、ヤバすぎるという話です・・・)

今は月額720円で3Dデータの書き出しが可能です!(年間サブスクリプションあったら絶対使うのに!)

良い機会だったので他のアプリ(Trnio, Scaniverse, RealityScanなど)や、

パソコン用アプリ(Windowsならmeshroom…なんと無料!)や、Mac用アプリ(PhotoCatch……こちらも無料!)も試して見ました。

ただ自分の使用用途だと、WIDARが使い勝手がよく精度も出しやすいので今後も使っていきます!

結果的にPhotogrammetry(フォトグラメトリ―)自体の理解が進んだよね。

デジハム君
デジチン

色々試したのですが、

  1. ターンテーブル(回転台)で被写体をぐるぐる回しながらとっても破綻しない(重要)

これをクリアできる物が少ないのです…。

「デジタル一眼レフ+単焦点レンズ」で撮影するのも試したんですが、
大量の画像を、さまざまな角度から、手ブレさせず、絞りをF8とか出来だけ全体にピントが合うようにして
(つまり室内をめっちゃ明るくしないといけない!)……ってなかなかな条件だし、苦労の割にそこまで3Dデータの精度が良くならないという結果に。

それなら部屋をできるだけ明るくして、iPhoneで撮ったほうが精度出るねという結論に至りました。

動機:
リアル粘土(NSP粘土)とデジタル粘土(ZBrush)の良さの、いいとこどりをしたい!

2022年冒頭、私は「ミニチュアを作りたい、そのためにデジタル造形をやる!」とZBrushと3Dプリンターを購入しました!

そして「リアル世界で彫刻(造形)を学びたい!」と彫刻セミナーの一般セミナー、経験者セミナーに参加しました!

双方ともを同時期に試してみて「どっちも楽しいし、双方の良さもある」と思いつつ、「リアル粘土とデジタルの行き来はできないだろうか?」と考えるようになりました。

※粘土彫刻は間違いなく直感的に作れるのですが、複製が大変だったり、仕上げはデジタル、複製も3Dプリンタが使えるというメリットがあるので、心がぐらつくのです…。

きっかけの1つは、NSP粘土を原型にシリコン型をつくった事。

自分が造形によく用いるNSP粘土は(すごい)油粘土です。紙粘土や石粉粘土のように乾燥後の色塗りはできません。

もし着色したければ型取りをして、レジンキャストで複製を作る必要があります。

以前、型取りにチャレンジしたことがあるのですが、これが結構大変。

防護服&防護マスクをつけ、シリコンを粘土につけ、石膏で硬め、レジンキャスト(ウレタン樹脂)を注ぐ……

これはガレージキット作りには必須作業になると思うのですが、かなりの気合と重装備が必要です!

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デジチン

型取りは貴重な経験だったのですが、臭いもさることながら、安全面※を考えると自宅ではカンタンにはできないな…と感じました。

※増粘剤の粉末ガラス、石油系で火気厳禁のレジン…大量複製するなら準備しまくるとして、少なくとも1作毎にはできないなと…

でも、もし NSP 粘土を簡単にデジタル化できたら……

  • 自分の手で大きな形・シルエット、 プロポーションをNSP粘土で作り、
  • さらに細かな作り込みはデジタルに移行してZBrushでブラッシュアップし、
  • 最終的に3Dプリンターで出力すれば、好きなサイズ、分割ができ何より色が塗れる。
  • デジタルデータとして残しておけるので、ライティングなどを調節してレンダリング等…色々と使い道が出てくる。

そんなことを考えるようになりました。

もー、それなら最初からデジタルで全部作ればいいじゃん!

デジハム君
デジチン

いやもう本当にごもっともなご意見です!ここまで個人向けデジタル造形ソフト&機材が充実してたら、効率性重視なら、間違いないのです、

ただ、リアル世界で粘土で作ってるからこそ気がつける所があるのです……

あとは純粋に楽しいというのもあるのです!

専用3Dスキャナー?LiDARスキャン?実は大穴の「大量写真合成」!

個人用3Dスキャナーが買える時代。でもいるかなぁ?

早速、3Dスキャナーを調べてみました。

業務用の3Dスキャナーだと、なんとミリ単位以下の精度でスキャンできるそう!ただちょっと手を出せない金額になります(2桁-3桁万円)。

では個人向けは?調べてみると10万円か、それ以下で買える事がわかりました。(時代の進化はすごい)

ただ…使い勝手があまり良くないと聞いたり、そこまでして本当に必要か?という気持ちもありました。

(3Dスキャナを自作する人も少なからずいて、電子工作的には楽しそうですが、一旦置いておきます!)

LiDAR搭載iPhoneを夢見るも…

そんな中、iPhone だとLiDAR(ライダー)という3Dスキャン用センサーが搭載モデルがあることを知りました!

※ポートレート写真などで正確な被写体深度を取得するために使うそうで…さすがApple。

一瞬「おお、これだ!」と思いましたが、LiDAR搭載されているiPhoneは 最上位モデルにしか搭載されていない事もわかりました。

そしてLiDARによる3Dスキャンは、小物(=自分が制作する作品)というより、空間(室内全体のスキャン等)を切り取るのに有効らしいのです。

※たしかにデモを見ると公園の銅像とか、ベンチとか撮ってる方が多いもんなり

むしろ小さなものに関しては様々な角度から写真を50~100枚程撮ってそれらのシルエットから形を作る方式が向いている事がわかりました!(この手法のことをフォトジオメトリーといいます。)

デジチン

つまりは…今どきのスマホならイケちゃうということですね!盲点!

スマホの様々な3Dスキャンアプリを試してみる(Trnio編)

探してみると結構な数の3Dスキャンアプリがありました。

その中で、自分は以下のような観点から様々なアプリを試してみました。

  1. 自分の創作物(NSP粘土、大きくても30立方センチメートルに収まる)を3Dスキャンしたい。
  2. スキャンしたデータはobj形式や、stl形式など、一般的な3Dデータとして出力できる。
  3. 精度は高いに越したことはないけど、大まかな形が取れていればOK。
  4. 【重要】家(作業スペース)はそこまで広くないため、回転台に乗せて撮影できること
デジチン

使う目的や、対象によってオススメ度合いは変わるのであくまで自分の場合はこれが良かった!という点にご注意ください!

Trnio

実は古くからある3Dスキャンアプリで、評判がよく、無料版と有料版(600円位)があります。

まずは無料版を試して見ましたが……このアプリはスキャン対象の周りを自分がぐるぐる回る事を想定して作られており、回転台に乗せて撮影できることを前提としていた自分には厳しかったです!

回転台ってこういうのです。

※ぐるぐる回すと自動的にシャッターがきられる方式なので、回転台だけまわしていると動かしていない認定となり、撮影がされないのです。

海外製のアプリなため、プロモーションビデオだと広い家でスキャンをしてましたね…羨ましい

またARKITモードなるものがあり、こちらはLiDARなしで大きいもの(公園にある銅像など)をスキャンする場合は使えそうでしたが、今回の用途には合わず……残念。

Trnio Plus(有料版)

上記Trnioの有料版になります。大きく変わるのはインストールされているスマホで撮った写真以外も使えること。

つまり、単焦点レンズをつけた一眼レフで高画素で撮影した写真を使える=精度が高まるのでは!?という期待感があったわけです!

では結果を見てみましょう…!(題材は製作中のワンちゃん。)

一眼レフで撮影した写真を何十枚か用意して…
処理して…
おお!いい感じに!

おぉ、いける!…と思ったのですが、

だめだ、立体として認識されていない…

自分の設定方法が良くなかっただけかもしれませんが、残念ながら自分の思惑どおりの3Dスキャンには至りませんでした。残念。

国産3Dスキャンアプリ、WIDAR

この他にも様々な3Dスキャンアプリを試したのですが、あまり良い結果は得られず「世の中そんなに甘くないよなー」と諦めかけていたとき、WIDARに出会いました。最初はそこまで期待していなかったのですが……このアプリは大変すごい子でしたよ!

以下、ZBrushに3Dスキャンデータをインポートした画像がしばらく続きます。

横幅・奥行き15cm、高さ20cmくらいの胸像

obj形式で書き出せたので、ZBrushに盛ってこれましたが、大体形が取れている!

もちろんちょっとゴツゴツしていますが、首元の奥行きや、目尻のくぼみも再現されている。

これを原型に細部を詰めて行くには十分な情報量だと思いました。(読み込み時点では約16,000ポリゴン)

少しゴツゴツしているけど、
大まかなシルエットはきちんととれている。
襟の中に髪の毛が入っていくところも再現。

高さ25cmの人物像

胸像はある程度厚みや大きさがあるのし、隙間もないからうまく行ったのでは?と思い、ちょうど作り終えていた人物像をスキャンしてみました。こちらも筋肉の大まかな形が取れていて、原型のたたき台としては十分な性能を発揮しています。

スキャン直後は三角ポリゴンで約18,000ポリゴン、この後解像度500くらいでダイナメッシュをかけて、クレイポリッシュをかけましたが…「再現度高いな」という感想。

特に脇の下や股下は形が不明瞭になると思っていたのですがそんなことはなく、正確にスキャンされています。

むしろ、元の造形で迷いが出ていたところも、きちんと出てくるので「頑張ろう、うん」となりました。

筋肉の形など、形がとれてる…
ダイナメッシュ後
クレイポリッシュ後

横長のワンちゃん。

最後に横長のワンちゃんをスキャンしましたが、バッチリ取れています。

スキャン直後
ダイナメッシュ&クレイポリッシュ

色々アプリを見てきましたが、当初想定していた以下の要件を満たすものに、ついに出会えました!

  1. 自分の創作物(NSP粘土、大きくても30立方センチメートルに収まる)を3Dスキャンしたい。
  2. スキャンしたデータはobj形式や、stl形式など、一般的な3Dデータとして出力できる。
  3. 精度は高いに越したことはないけど、大まかな形が取れていればOK。
  4. 【重要】家(作業スペース)はそこまで広くないため、回転台に乗せて撮影できること
デジチン

無料版は一週間に5つまでスキャン可能、3Dデータの書き出しは将来的に有料になる可能性があるなど、
留意点はありますが…無料でここまでできることに、開発者の方に頭が下がります。

WIDARによる3Dスキャンを掘り下げる

テクスチャ解像度について

先程お見せした画像はobjファイルをZBrushにインポートした画像なのですが、WIDARはアプリ単体で3Dデータの加工ができちゃいます。

アプリ内だとテクスチャありなので、かなり実物観があります。

(粘土で模刻して、5分くらいでスキャンして、粘土を崩して、次に進む!がやりやすくなるかもしれません。)

テクスチャ解像度をを思いっきり下げると、「結構テクスチャで頑張ってたんだな」感もでてきますが、モデル自体の大まかな形が取れていることは先程のZBrushの画像を見ればわかるかと!

今更ですが、FF9のフライヤさんインスパイアです。
実際にはここまでテクスチャを下げることは無いと思うので、実験的に下げています。

スキャン後のごみ取り、加工もカンタンに。

3Dスキャンを行うと、どうしてもゴミ(意図しない物体のスキャン)が行われてしまいますが、WIDARはアプリ上でこれらを削除、編集できます。(もっというとライティングやエフェクトも追加可能。ただスキャンするだけじゃないのがスゴイ)

粘土造形をする場合、事前に台座に支柱をつけたりして制作を進めると思うので、台座から著しくはみ出していなければ、立方体型のクロップ機能でトリミングすれば一発です!

少し分かりづらいですが、犬の台座の下がバリのようになっています。立方体のクロップ機能を読み出して切り取りをすると…
台座底面がスパッときれいになりました。

また、空中をにあるゴミも、消しゴムツールでカンタンに除去できます。

青で選択しているのが消しゴム選択中のエリア
実行するとその部分がきれいに無くなります。

WIDARできれいにスキャンを行うために…

ここまで、WIDARできれいにスキャンできた事例を紹介してきましたが、逆に「これをやると綺麗にスキャンできない」パターンもわかってきたのでまとめます!

回転台を使うなら、背景色は極力単色で。

回転台を使う場合、最低でも「正面、アオリ(下から撮影)、俯瞰(上から撮影)」の3角度からの撮影が必須になります。

最初はこれらに加え、「真上」「真下(台座からはずす)」なども撮っていたのですが、合成時にエラーになりやすく、
アオリと俯瞰で綺麗に形が取れていることがわかったので、今は撮影していません。

別の言葉で言えば、背景は縦長かつ余計な情報がないものが適切になります
※ドア、カベ、カーテン、何でも良いのですが…

これを無視して情報量が多い空間でスキャンを実行するとどうなるか、こうなります。

「PCのディスプレイ、黒くて丁度よいや!」で失敗した例。アオリや俯瞰撮影時に余計なものが入って、肝心のスキャン対象が消失しました。
「床と壁紙にくっつければいけるだろう!」で失敗した例。
おそらく、WIDARも回転台で撮影する前提で作られているわけではないので、こちらもスキャン対象が消失…
デジチン

原型が壊れるわけでもないし、写真撮影と処理の時間(10分位)が飛ぶだけですが、
「あー…」という心理的ショックがそれなりにあります笑

そんなわけで、自分が撮影するときは

  • アオリ/俯瞰の角をとっても単色が保たれるドアの前で撮影。(自由なライティングができる環境だとなお良し)
  • 高さがあり、座面以外が目立たない携帯用椅子の上に回転台を置く(アオリ/俯瞰にしても余計なものが入り込みづらい)
  • その上に台座よりも小さく、目立たない筒を乗せる(重量を出すために、小銭をいれています)
  • さらにその上に「台座+造形物」を乗せる(必要に応じて養生テープで固定)

というやり方を採用しています。今のところ、これでうまく3Dスキャンができています。

特に横長・縦長な場合はアンバランスな状態になるので、
養生テープで仮止めしたほうが安心ですね。

どうしても部屋の隅っこでの撮影となるため、暗かったり、光の当たり方が良くない(横から差し込む)等の場合は撮影用ライトで調整するのも1つの解決方法になります。

以下の商品は一眼レフで写真を撮影するとき用に購入しましたが、iPhone撮影だったり、フィギュアのライティングだったりで結構重宝しています。

写真の撮影は「手動」で。

WIDARの撮影モードは、一枚一枚手動でボタンを押すモードと、等間隔で自動的にシャッターが切れ続けるモードがあります。

「たくさん撮影する必要があるのだから自動で撮ってもらったほうがいいだろう!」と自分も最初は思っていたのですが…手動にしましょう。

デジチン

理由は、オートで100枚撮った写真の「処理に失敗する(エラー)」や「対象(粘土造形物)が消える」確率の高さです。

自分はiPhoneSE2とiPhone12の2台持ちですが、後者のほうが写真の明るさやノイズの少なさ、何よりオートフォーカスのスピードが早いです。その影響か、iPhoneSE2より、iPhone12のほうがスキャンに成功する確率が高いです。

そしてオートで100枚取るとき、iPhoneのオートフォーカスが間に合わない、または回転台を回してい被写体ブレが発生している写真が混ざってしまうのコンビネーションで、オート撮影の失敗確率が上がっていると考えています

WIDARは100枚以上(もっと行けたと思う)の写真を取れますが、きちんと「正面・アオリ・俯瞰」の角度で40~50枚程取れば先程のZBrushレベルの形は出してくれるので量より質の精神でいきましょう!

ビデオアイコンがついていると等間隔でシャッターが切れますが、正確性を狙うなら手動で。

まとめ

「自分が作った粘土彫刻を気軽に3Dスキャンできないかな?」と思ってWIDARを見つけ、スマホだけでかなり良い感じに3Dスキャンができることがわかりました!

仕事用の3Dデータ作成ならば、さらに精度の高い業務用専用スキャナーが必要だと思いますが、模刻の記録や、スキャンした3Dデータからさらにブラッシュアップしていく場合は良い粒度感なのではないかと思います。

以上、お手軽な3Dスキャン方法や、うまくいくやり方、NGなやり方でした!

この記事が皆様のお役に立てば嬉しいです!

関連ページ

今回、WIDARで読み取った粘土彫刻作品は以下の記事をベースに作りました!

すでに世界に存在するものをうまく切り取る(スキャンする/撮影する)醍醐味もありますが、自分で作っちゃうというのも……アリですし、何より楽しいですよ!

デジチン

↑の記事で記載している粘土はNSP粘土という、かなりナイスな油粘土ですが、自分も大昔は「Mrクレイ」「ラドール」…ダイソーの石粉粘土でカタチを作って遊んでいたので、楽しみ重視でやっちゃうのが一番だと思います…!

紙粘土や石粉粘土は乾いたら固まっちゃうけど、油粘土は「作って楽しみ、スキャンして記録ぶっ壊して次の作品へ…」ができるので改善サイクルが回しやすい材料だなぁと、思います。

デジハム君
デジチン

最初からデジタル粘土(ZBrush、Blender、NomadSculpt)を使うという手もあります。以下の記事に内容をまとめたので良かったら見てみてくださいねー!

-NomadSculpt, ソフトウェア, レビュー, 彫刻