NomadSculpt

NomadSculptで行う、フィギュアのパーツ分割のコツ(ver1.90の機能を色々使う)

2024年10月7日

デジチン

この記事ではNomadSculptで3Dプリント用フィギュアのパーツ分割について解説していきます。

その途中で、挿入ブラシ機能、SelMask活用、フェイスグループ、X線透過表示、などなども説明していきます!

ちょっと上級者向けの記事かもしれません。

ノマドスカルプトでの3Dフィギュア作成とパーツ分割のコツ

今回は、ノマドスカルプトで3Dフィギュアを作成し、複数パーツに分割して3Dプリンターで出力する方法について紹介します。

これまで、3Dフィギュアの分割はZBrushで行われていましたが、最近のノマドスカルプトのアップデートにより、

iPad上でも同様の作業ができるようになりました。この記事では、その操作手順やポイントについて詳しく解説していきます。

はじめに全体像を説明しますと….

  • 1. 分割したいパーツにマスクをかけて、  フェースグループを設定、分割する。  (必要に応じて、穴閉じもする)
  • 2. 分割したパーツにダボ(凹凸)を  つける。「挿入ブラシ」で四角等を  追加する。
  • 3. ダボ含めて、再度パーツ全体に  マスクをかけて、 「エッジループ > 取り出し」で  0.15-0.2mm程のスペースを作る。
  • 4. 少し大きくしたパーツで、ブーリアンを  かけて、パーツ間に隙間ができるように  する
  • 5. 「X線」機能などで、無事隙間が  できていることを確認する   
デジチン

以上です、分割は大変だ…文字文字しいので、以下から画像やら動画が入ります。

それでもやっぱり文字多いですが..

0. 計画を立てる

フィギュアのパーツ分割作業は、下手するとフィギュアを作るのと同じくらい時間がかかってしまう大変なものです。

一生懸命分割しても、3Dプリントしたら「はまらない!」という悲しみはよく発生します。

(3Dプリント時の横ズレだったり、歪みだったり…)

ただ、できるだけ成功確率をあげておきたいのが人情(?)というもの、

その為に、分割作業の前日位に簡単に計画書を書いておきましょう。

慣れてる人はぶっつけ本番でもOKですが、

絵に起こしてみると「あ、この分割はまずい」と事前に気がつけたりします。

描いた絵を一日寝かせると違和感に気がつける、というのと同じですね。

デジハム君

1. パーツを分割する方法

解説画像 1 〜4

1.「Selmask > 楕円形ガイド > 円」を選び、自動検証はOFFで、とりあえず円を呼び出す
2. 「円」を出した後に、「Selmask > 多角形」を選ぶと一定間隔で点が打たれてコントロールしやすくなる。
3. 点をつまんで、他の点の上に重ねると、点が結合されます。マスクを尖らせたり緩やかな曲面を作ったりできます
4.こんな感じで緩やかな カーブを作って、 マスクをかけていく。 (”自動適用OFF”にしておけば、 一度作ったマスクの形を保ったまま 作業を続行できる!)

まず、分割したいパーツにマスクをかけます。

ノマドスカルプトには、ブラシ一覧(画面右横)に「マスク」「セレクトマスク」があります。

どちらも優秀で使いやすいですが、セレクトマスクの形状を整えて、綺麗な曲面を作る方法を上記にまとめています。

ポイント:セレクトマスクで綺麗に曲面を選択するには、マスクの制御点をうまくコントロールしましょう!

「自動検証」をオフにしておけば、緑の丸を押したらマスクがかかり、他のモードに切り替えない限り、変形したセレクトマスクの形を維持できます。

分割するエリアは部分的に解像度を高くしよう。

デジチン

Tips:

分割するパーツの境界線付近はダイナミックトポロジーを使って、その部分だけ解像度を高く設定しましょう!

分割する部分の解像度を仮に、300くらいで作っていたらなば、倍の600かそれ以上にすると良いということです。

理由は、解像度が低いと分割の境界線がガタガタになってしまい、「穴閉じ」などを行っても、ガタガタに引っ張られてしまうからです。

当然、その後の分割作業も、ガタガタ下パーツで行ってしまうので最後の最後で気がついて「しまったぁ…」となります。

既存の形に影響を出さず、解像度だけを高くする手法の1つに

「スムースブラシで、ダイナミックトポロジーをONにして、強度を0にする」があります

この方法は部分的に解像度を下げるときにも使えるので、ぜひ試してみてください!

Screenshot

なまじ「トリム」や「分割」を投げ縄ツールなどで作ると、「お、綺麗な断面になるじゃん!」と思って、途中で気がつきづらいのです……

デジハム君

また、分割実行後、穴閉じ後に断面がガタガタしていた場合、スムースをかけておくと、

後で凹凸パーツを作るときに、3Dデータが綺麗になり、ブーリアンで失敗する確率が減ります。

2. フェイスグループ機能でパーツを管理

解説画像 1〜3

1. マスクをかけたら、 「フェースグループ」と 「変換」を行います。 デジタル粘土に色がつきますが、 この色がつけば、 「隠すブラシ」などで要素を 一時的に非表示にしたり、 後で分割する時に便利です。
2.同じように足の部分もマスクをかけて、 「フェーズグループ」の設定をしましょう。 ※ちなみにZBrushのポリグループと  ほぼ同じ意味です!
3.「隠す」ブラシを使って、 フェーズグループを設定した箇所を 一時的に消したり、本当に消したり、 パーツを分割できたりします。※ちなみに見過ごしやすいですが、 画面上部に表示される、 このウィンドウに機能名や、 細かな機能が発動するアイコンがでます。 注意深く見てると発見があるかも?

フェイスグループを設定する

次に、マスクをかけた部分に対して、フェイスグループという機能を使います。

この機能は、マスクで選択した部分を記憶してくれる便利なものです。

一度指定しておくことで、パーツの表示・非表示、削除、分割などが簡単に行えます。

注意:ZBrushでのポリグループ機能と同じ役割を果たすので、慣れている方は同じ感覚で操作できます。

デジチン

ややこしいのですが、「フェイスグループ」の設定は「マスク」「Selmask」からでないと行えません

「フェイスグループ」ブラシ(?)は現在の割り当て状況を確認する時に使う、と考えておくと混乱が少なくなりそう。

3. 凸凹(ダボ)の作成と隙間調整

画像の順番が前後しますが、うまく穴を開ける(ブーリアン演算)すると、
パーツとパーツの間にわずかに隙間ができます。この透過表示は画面左下のX線表示から!

分割が終わったら、次は凸凹(いわゆるダボ)を作成します。

ただ、ここで注意が必要です。単にブーリアン機能で凸凹を作るだけでは、隙間がないため、

3Dプリンターで出力した際にパーツが噛み合わないことがあります。

解決策:3Dプリンターで出力する際、0.15ミリから0.2ミリ程度の隙間を開ける必要があります。

このサイズが適切でないと、パーツが緩すぎたり、きつすぎてはまらないことがあります。

4. ノマドスカルプトでの「ZBrushの変形>膨張」機能がない問題は、マスクで解決する!

ZBrushには「ジオメトリ > 変形 > 膨張」機能があり、パーツを均等に膨らませることができました。

ギズモツールを使って拡大する方法もありますが、場所によって拡大率が異なり、思うような結果が得られない場合があります。

NomadSculptでZBrushの膨張のような結果を得るには以下のような方法があります!

マスクで囲った部分の高さを調整できる「設定 - マスク > 取り出す」がZBrushの膨張と似たような効能を得られます

5. 挿入ブラシとインスタンスを活用する

挿入ブラシを使って、試しに腕にチンチラを生やして見ましょう。

腕の面に沿って3Dデータ(チンチラ)が配置され、そのまま移動をすることができます。

さらにGizmoの軸も自動的に最適化されるので、その後の微調整も非常にスムースに行うことができます

1.「挿入ブラシ」は円柱や立方体だけでなく、「インスタンス」を選んでいる場合は  自分が作成したパーツも追加することができます!  ※シーンで、チェックボックスでチェックをつけてるもの   2. これを利用して、事前に作っておいた0.15mm立方体を読み込み     「マスク > 取り出す」で、狙った大きさのパーツを作ります。  ※ 画像見ずらいの、すみません!

ノマドスカルプトでは、「挿入ブラシ」を使うことが、今表示している3Dデータの上に立方体や球体などを置くことができます。

ZBrushでいう、IMMブラシ見たいな感じですね。

挿入ブラシを選ぶと、画面左側に立方体や球体などが表示されますが、その中に「インスタンス」機能があります。

これを使うことで、現在作成中のメッシュからパーツを呼び出すことができます。

これで事前に作っておいた凸パーツを埋め込んだり、隙間確認用データ(0.15mm立方体)などを呼び出して、精確な作業を行うことができます。

デジチン

普通にいろんな可能性を秘めたブラシだなと思いました。悪魔のツノとかつけたりできそう。

ちなみに自分はこちらの3D定規のお世話になっています!

https://takenoko-lab.booth.pm/items/1807892

6. 0.15ミリの隙間を作る方法(挿入ブラシと、マスクの膨張を組み合わせる)

隙間を作る際には、挿入ブラシで立方体や球体などの形状を配置し、マスク機能を使って0.15ミリから0.2ミリの隙間を確保します。

この例だとダボの先端に「0.15mm立方体」を挿入ブラシでくっつけて、それがギリギリ埋まるようマスク膨張させています。

これにより、隙間が確保でき、パーツがスムーズに合わさるようになります。

これを繰り返して、ダボ穴等を作っていきます。
デジチン

たまに挿入したものが、半分以上元の3Dデータにめり込んでしまうことがあるので、

等倍まで拡大して確認するのをお忘れなく!方向を指し示す立方体(人によっては球)のUIの

横にあるアイコンで、画面いっぱいに拡大することができますよ。

選択した3Dデータを画面いっぱいに表示してくれる機能。便利なのだが、これだけピンポイントでキーボードショートカット割り当て不可なんですよね。。。残念。
デジチン

【追記】

選択した3Dデータを画面いっぱいに表示してくれる機能、キーボードショートカットはないのですが、

ダブルタップショートカットとして存在していました!作業がとてもはかどるのでチェック!

Screenshot

7.ブーツと台座の例で、ブーリアン演算を解説

解説画像1〜2

1.台座に凸パーツをつけて、足(ブーツ)側に凹ができるようにしています。 2. その形に削り取る方のパーツを非表示にします。  ※よくこれ、間違えて反対側の操作をしてしまうことがあります…
台座側に凸パーツが付いている+凹パーツの方が少しだけ大きいので、 ピッタリでハマらない&ガタガタしないように、なります…なるはず。

NomadSculptのブーリアン演算

ZBrushにはライブブーリアンという便利な機能があります(ブーリアン演算後の形をリアルタイムで確認できる)。

NomadSculptにはその機能はないのですが、基本的なブーリアン演算は可能です。

やり方はシーン(パーツがたくさん並んでる一覧)にて、操作対象のパーツにチェックボックスをつけて、

表示/非表示(目のアイコン)でどちらを削り取るかを設定します。

デジチン

自分はよく間違える(間違えてもCtrl+Zですぐ戻せますが)のですが、

凹にくり抜きたい方を「表示」、凸にしたい方を「非表示」にします。

分割のトラブルシューティング

ブーリアンが実行できない、実行されても意図した挙動にならない

先日、自分もこの状況になりました。(分割/ブーリアンには魔が潜んでいる…!)

まだ「完全に実行できない」というケースには出会ってないのですが、例えば凸パーツでブーリアンをかけたときに

凸の先っちょだけ凹側に埋まってしまうなど….

デジチン

対処法は色々あると思うのですが、凸パーツ側にボクセルリメッシュをかけて3Dデータを綺麗(均一)にすることで、自分はうまくブーリアンができるようになりました

特に今回の記事で紹介しているような、「少しだけ膨張させて隙間を作る、ブーリアンのためだけに作成するデータ」は一時的にしか使わないので解像度を思い切りあげてもすぐ消しちゃうので問題ありません。

ZBrushのライブブーリアンで分割する時も、完全に失敗・処理は走るが意図した形にならないは、結構発生しました。

理由は「3Dデータが期待ない、ぼろぼろ」な事が圧倒的多数…!!

  • 切ったり繋げたりしているウチに、靴中に浮いてしまった3Dデータの断片…
  • 気がついたら裏表が融合してしまった(薄いパーツ作るときや、この記事で紹介した「マスク>膨張」でもなりがち)

なので、作ってる最中も綺麗な3Dデータを作ることを心がけておくと、最後まで心穏やかに作業できます。

デジハム君

8.分割以降の話

X線モードと視覚的な補助

NomadSculptでの作業を視覚的に補助するために、X線モードやマテリアル変更も有効です。

左下にあるX線モードを長押しすると、いくつかの表示オプションが選べます。

ただ、白黒の表示が見づらい場合があるため、自分でマテリアルを変えて作業するのも一つの手です。

私は、カラフルなノーマルマップのマテリアルを使うことで、細かいディテールが見やすくなると感じました。

ページ冒頭でくるくる回ってるコレの二周目が、X線(透過)モードです。色々マテリアルを切り替えられます。

中空構造と3Dプリントの実際

3Dプリントの際にパーツを中空構造にする場合、NomadSculptでデシメーションやポリゴン数の調整ができますが、その後の作業はパソコン用のスライサーソフトウェア(chitubox)を使う必要があります。

スライサーソフト側で自動で中空構造にすることができますが、この際の厚さの設定(2ミリや3ミリ)が重要になります。

なぜかというと、最低3mm以上の穴を2つ以上開蹴る必要があるからです。

これをやらないと空気やレジン液の出口がなくなり、3Dプリント失敗確率が飛躍的に高まります。

ただ、どこにでにでも穴を開けられるわけではなかったりしますので、X線透過モードと、

3D定規や作成した3ミリ立方を組み合わせて照らし合わせることで、穴開けの位置が視覚的に確認できるようになります。

デジチン

穴が開くまで連打するのも1つの手ですが、特に小さなフィギュアを印刷する場合は中空ではなく、

中身ぎっちりで作った方が良いケースもあります。ぜひ確認してみてください!

9.印刷前準備(デシメーションとスライサーソフト)

デジチン

(余裕ができたら追記します)

NomadSculpt上でデシメーションする

デシメーション前=約1,200万ポリゴン

デシメーション後:約240万ポリゴン

※ぱっと見の印象はほとんど変わらず、3Dプリントしても「こんな細かく出るのか!」となっていたので、

もう少し削ってもよかったかも。

スライサーソフト(パソコン・Chitubox)

10.3Dプリンターで出力

デジチン

無事、パーツ分割と3Dプリンター出力が完了しました!

特に「ハマらない」や「スカスカすぎてパーツが落ちる」といった問題もなく、このやり方は中々良いなと!

断面を目立たなくさせる分割方法もあるので、次回以降試してみようと思います!

まとめ

フィギュアのパーツ分割作業は、下手をするとフィギュアを作るのと同じくらい大変です。

しかし今回の方法で、iPadのNomadSculptでもパーツ分割ができることがわかりました。

ZBrushの機能に慣れている方でも、ノマドスカルプトのアップデートによって多くの作業が可能になったことを活かせば、

iPad上でのフィギュア作成がさらに楽になります!

※もちろんこの手法は元々ZBrushで行っていたものなので、ZBrush for iPadでも行うことができます。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

久しぶりのNomadSculptのアップデート情報付いて書けたけど、

  • 実用的なパーツ分割処理の仕方
  • 挿入ブラシ機能、SelMask活用、フェイスグループ、X線透過表示などなど

便利機能を知って使って、共有できてよかったです〜!

デジハム君

今回もお疲れ様でした!お茶にしましょう〜

いきなり頑張っちゃうと疲れちゃうので、

ときどき休憩を入れながら、ちょっとづつ体得していきましょう〜!

リプトン
¥566 (2025/01/13 17:59時点 | Amazon調べ)

※特に紅茶☕️でなくても全然OKです笑.上のAmazonリンクをポチってもらって、なんでも良いので購入いただくと、でじちんのお財布が暖かくなります!

いただいた支援は全額次の学びと記事化に使われます.いつもご支援ありがとうございます!

-NomadSculpt